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教員はいま

<文:校長・安河内敏>

※2013年10月発行 北星学園報に掲載された記事です

厚生労働省が毎年実施している「新規学校卒業就職者の就職離職状況調査」によると、2012年には、高卒で就職した人のうち3年以内に離職する人は、全体の37.6%、大卒で就職した人のうち3年以内に離職する人は全体の30.0%もいることがわかってきました。厳しいと言われてい「就活」をくぐり抜け、せっかく得ることのできた職を3年をこえることなくやめてしまう、その背景に何があるのでしょうか?

私の世代であれば、学校で良い成績を取り、受験勉強をし、とにかく進学をすればそれなりの暮らしは保障されるという流れでした。現在でもそれは同じように見えるのですが、何かが違うのです。

あるニュース番組では、少子化が進み、地方では学校の統廃合が進んだため、子どもたちが遠いところからの通学になり、放課後に遊んで帰るという事が難しくなり、また、地域は地域で子どもが少ないので、まっすぐに帰って一人テレビゲームをしているというのです。都市部においても、これは昔からですが、思い切り体を使って遊ぶ場がないので、同じくテレビゲームで遊ぶ状況。そこで学校にかなりの金額をかけて、遊具を導入したところ、子どもたちが休み時間や放課後に集団であそぶようになったということが報じられていました。

子どもが遊ぶ、ということに関しては私のころとはずいぶん変わってきているのだという事を感じます。遊びはみんなで自らがつくりだすものでしたが、現在のそれは提供されるものになってしまっているようです。それでも、集団で皆がいきいきと遊んでいる姿を取り戻すという点では、朗報なのかもしれません。

もう一つ同じニュース番組の中で、象徴的な報道がありました。2020年に東京オリンピックの開催が決まったのですが、JOCの青少年育成のプログラム(JOCエリートアカデミー)があって、それは中学1年の入学時に、身体能力測定や、スポーツ28種の種目をやらせ、データを取り、最もその子に向いている競技を早くからわからせ、集中してやらせるというものでした。その中のひとりは、ずっとバスケットボールが好きでやってきたのですが、プログラムからの適正によると、射撃が向いているというので、悩みながらも射撃をはじめたら、あっという間に世界大会で銅メダルを取ったということが報道されていました。

このプログラムの是非は置いておいたとしても、私たちはいろいろやってみて決める、という事をもう一度見直さなくてはならないのではないでしょうか?そのためには、膨大な「これやって何になるのだろうか?」という時間と、労力が必要になってきます。世の中が安定していて、みんなが同じような方向で走っていればよかった時代は終わろうとしています。これからは、世の中がどのように変わっていくのかを予測したり、変わったということを自分なりに解釈し直して、新しい価値観を身につけなくてはならなくなるでしょう。子どもの遊びでは、その時々の状況と構成メンバーで、ルールがコロコロ変わっていきます。そうすることでより遊びが楽しくなるからです。いろいろとやってみて、様々な場面でどのように考えて動けば集団が最も力を発揮しうるのかという経験や勘のようなものは、じつは昔の遊びのなかに詰まっているように思います。

私たちの北星学園にとっては、学びや出会いの場をどれだけつくるかが重要になってきます。総合学園である強みは、学生・教職員にさまざまな立場の人が、それこそ総合的にいることです。それぞれの持ち場で力を発揮している人々(個)が、もっと大きなフィールドで連携し(集団)、事業をなして(遊び)いけば、学生・生徒にとっては、より多くの事を経験することができ、より大きな力をつけていくことができるのだと思います。

学園内で、小さなものからでもよいので、多種類の人が集まって何かを形にしていくことができていければと考えています。

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