実生活について
実生活について
肌寒い季節、私は母に連れられ初めて北海道を訪れました。
今、思い返してみればこの北星余市こそが私の分岐点だったと思います。
私は北星余市に通う前、私立の女子校に通っていました。先生も友達も何もかも不自由なく生活していましたが、ふと気がつくと地元の友達と夜遅くまで遊んでは朝帰って遊んでは帰っての日々が続き、段々と今まで休んだことがなかった女子校にも行かず、家にも帰らなくなりました。
久々に帰ってきても親と衝突し殴り合いの喧嘩もしたことがあります。毎日、夜中まで私を探しに駆けずり回って、久しぶりに顔合わせては泣いて「お願いだから行かないでほしい」と私の手を握る。いつ帰ってくるんだろうと玄関先に布団を敷いて寝る親を見て私は心底、嫌いでした。今になって親のありがたみが少しは分かるようになってきましたが、その頃の私は先の事なんて何も見えてなかったんだと思います。
そしてこの昼夜逆転の生活が続く中、珍しく家に帰りリビングで新聞を読んでた時、ルーキーズの撮影現場が私の家から近いと知り母に伝えました。
それを知った母がふと私に「ルーキーズみたいな学校があったら行ってみたい?楽しそうだよね!」と。
私は「うん」としか答えませんでしたが、その言葉を聞き母と父が着々と進めていた事をやっと実行しようと心の中で決心がついたそうです。
両親が考えてる事なんてまったく知らない私はいつも通りに夜起きて遊んでの繰り返し。数日が過ぎ久々に家に帰って2階にある自分の部屋に行きました。
すると私の机の上に見たことがないDVDとパンフレットが。。。
また勝手に部屋に入って!とムカついてはいましたが目の前にあるパンフレットが気になって仕方がない。
少しだけパラパラとめくるくらいならいいだろうと見てみると何故か埼玉ではありえない雪が積もった写真。海の写真。山の写真。訳が分からない一体なんだ?ここはどこなんだろ。もうページをめくるたんびに困惑してパンフレットの裏を見たら住所は北海道余市。
私は北海道の文字を見て急いで階段を降り両親がいるリビングへ息を切らしながら『このパンフレットなに?』と母に伝えると「あー!見たの?明日、北海道に行くから準備しといてね!」
ムカついていた事も忘れ呆気にとられた私は「うん」としか答えられませんでした。
そして次の日、気がついたら札幌へ小樽へ海鮮丼を食べ気がついたら北星余市へ。
面接が終わり帰ろうと千歳から羽田に着いた瞬間、北星余市から母に1本の電話が。。「お子さんは2年B組になりました。」私は考える間もなくまんまと両親の戦略に引っかかったのです。
そして私は北星の生徒になりました。
編入当日、担任に連れられB組の教室へ。中に入って見ると、朝では考えられないほど、元気いっぱいな子や携帯いじってる子、友達と話してる子、寝てる子。派手な子、地味な子、大人しい子、うるさい子が沢山いました。
見た瞬間、正直不安で今すぐにでも帰りたいと思っていましたが、北星余市は半分が編入生であり北星の生徒は編入生がいきなりきてもビックリしたり珍しがる事はありません。なのでごく普通に話しかけてきてはあたかも自分が昔から北星の生徒であったんじゃないかと錯覚におちいります。
正直、個性的な子は多く喧嘩する事はあると思います。私も沢山、喧嘩しました。しょうもない事で喧嘩し北星を飛び出した事もあります。でもそのしょうもない事でも先生は見捨てず、私の気持ちを1つ1つ拾ってはしつこく話しを聞いてくれる。あれがダメこれしたらダメ!とかではなく生徒1人1人の気持ちを大事にして真正面から受け止めてくれる。例えしつこいうざいと思われてもめげずに先生は地獄の果てまで追ってくるんじゃないかと思うくらいとても熱心です。それは1人の先生だけではなく全員の先生が当たり前のようにしてくれます。
悪い事をしたら分かるまで精一杯怒る。良い事をしたら一緒に心から喜んでくれる。あくまで生徒ではなく友達のように接してくれたり家族のように暖かい言葉を投げかけてくれます。普通の学校と違うところは休み時間になると、職員室は生徒でいっぱいになります。それは呼び出されたからとかではなく、自らが先生と話したい安心する場所が職員室だからです。
生徒の小さな変化に気づける事は、先生達にとって日々の積み重ねなんだなと思います。
そして一つ言えるのはイジメは一切ありません。ビックリするかと思いますが地味な子でも派手な子でもみんながみんな仲が良いです。差別する事も仲間ハズレにすることもなくみんな心優しい子達が集まっています。
恥ずかしくて優しさを隠してる子もいますが、みんな純粋で思いやりのある生徒達です。
ピュアすぎてお互い勘違いして喧嘩する事はあるとは思いますが、でも北星では伝えたい事は下手でも伝える事を学びお互いに話し合って仲直りして段々と相手を思いやる気持ち、友達の大切さを学びます。
寮に帰って自分の部屋で悩んでいたりすると、友達がやってきて「どうしたの?」と気にかけてくれます。私が友達に「何で私が悩んでるのが分かったの?」と当時、聞いた事がありました。
友達は「そりゃ喧嘩も沢山してお互い言いたい事言ったり、お互い悪い事したら怒ったり楽しい事があったら一緒に笑いあったり、24時間一緒に過ごしていると嫌でも分かるんだよ!どうせすぐに気がつくんだし私達は家族のような存在だから心配するのは当たり前!1人で悩んでないですぐに言いなよ!みんなで悩めば少しは楽になるでしょ?」と言っていた事を今でも忘れません。
今でもその子達とは何でも言える友達であり、この先も変わらず私にとって大切な存在です。
また、北星に行く前は両親の顔を見ては言い争うほど仲が悪く、ごく当たり前の会話すらできませんでした。しかし北星に行って最初はお小遣いを要求する電話から段々と今日の出来事や余市の事、友達の事、少しずつ会話が成り立っていきます。
今までずっと当たり前のようにいた家族と電話でしかつながる事が出来なくなった事から、お互いに電話がどれほど必要で大切か知りました。
親も「子どもから離れ色々と考える事が出来た。子どもだけが悪いんじゃない、私たち両親も悪かったんだね。」そういう風に思ってくれてた事を言ってくれたことで親も陰で頑張っていたんだなと思い知らされお互いに泣きながら、今までありがとうと言えなかった言葉を伝える事が出来ました。
一度は諦めていた夢も、本当の友達は、道を外れたら怒ってくれて、良い事をしたら自分よりも喜んで泣いてくれて、お互い支え合う事なんだという事も家族とまた幼い頃のように笑い合える事も全て北星余市のおかげだと思っています。
北星に行く前は大学には行かない!と頑固に言っていたのに、北星を卒業してからは弟が障害がある事から幼い頃から夢だった福祉系の大学に進みました。今は大学病院で児童指導員として働いています。あれほど嫌だった実家暮らしでしたが、今は実家から通勤しており毎日の出来事など話したりして充実した日々を送ってます。
今は近くに通信の高校など沢山出来ていますが通信では学べない事が沢山あります。
一人一人の個性を尊重し伸ばしてくれる、自分の視野が広がり周りを気遣えるようなり、北星の卒業式は卒業証書を貰うだけではなく、今まで子どもたちが伝えられなかった両親や先生、寮母に感謝の言葉を伝える舞台でもあります。
それは強制的に言わされるのではなく自ら生徒一人一人が伝えたいという気持ちで舞台の上で感謝の言葉を伝えます。
そんな卒業式は北星余市だけだと思います。
今、悩んでいる親御さんへ
北海道子どもを1人で行かせるのは不安だって方も多いと思います。大切に育ててきた子どもを遠くに行かせるのは本当に辛いですよね。でも北星に通わせてる親御さんたちはみんな経験しています。大丈夫です。
47都道府県で相談会があり在校生、卒業生の親御さん達が親身になって話を聞いてくれます。何も隠す必要なんてないみんなが味方です。一人で悩まないでください。
今、悩んでいる子どもへ
今の世の中、イジメであったり大人を信用出来ずにいる子ども達が沢山いると思います。
でもみんな人それぞれ辛い経験があって北星に来ている子達が沢山います。
だから自分だけだと思わないで!
必ず友達や寮母さん、先生や余市が助けてくれます。
きっと北星余市に行ってよかったと思うはずです。
私がそうだったように。
北星学園余市高等学校
〒046-0003
北海道余市郡余市町黒川町19丁目2-1
Tel 0135-23-2165(職員室)
Fax 0135-22-6097(職員室)
© Copyright Hokusei Yoichi High School. All rights reserved.