僕の工作

2018.12.15 コラム

大工、建築家、デザイナー

村上智彦

TOMOHIKO MURAKAMI

好きなことを仕事にすると大変だとか、仕事ってものは辛いものだとかよくきく。だけど、好きなことを真剣にやればやるほど、つらいことだとか面倒くさいことも含まれてくる。好きなことを仕事にしても、好きじゃないことを仕事にしても、結局のところ、どちらも同じじゃないかと僕は思う。どうせなら好きなことで悩みたい。

僕は工作が好きだ。小さな頃、工作に熱中して気がつくと何時間も経っていた。どうやったら大好きな工作を続けられるか真剣に考えた。大工になろうと思った。お金を稼ぎながら工作のスキルを身に付ける事が出来る。これはいい。

片っ端から工務店にアポを取って会いに行った。「明日からおいで」って言ってくれた工務店はお寺や神社を作る会社だった。そうやって僕はいわゆる宮大工になった。同期は工務店の2代目や宮大工に憧れて来たヤツばかり。僕は工作のスキルを上げるべく、必死で働いた。大工の仕事は思 ってた以上に奥が深かった。江戸時代のお寺の修理に行ったり、三重塔のプロジェクトにも参加した。あちこちの現場で沢山の人と出会い、話をした。庭師に、瓦屋さんに、左官屋さん、建具屋さん。チームで作る喜びを知った。気がつくと同期は僕だけになっていた。

休みの日は友達のお店を作りに行き、工作にも打ち込んだ。パリのお鮨屋さんのカウンターを作りにも行った。雪で壊れたフェンスを直したり、犬小屋を作ったりもする。オランダで木工教室を開いたり、家にツリーハウスを建てたり。いつのまにか大工の仕事と工作の境界がなくなった。誰かの役に立てること。喜んでもらえること。ひとりでも作るし、みんなでも作る。考えたことを実際にかたちにできる。それが僕の工作。君の好きなことはなんだろうか。僕は工作が好き。いまも作り続けてる。

文:村上智彦/写真:辻田美穂子

 

プロフィール

村上智彦 | TOMOHIKO MURAKAMI

1978年北海道恵庭市生まれ。Gen & Co.代表。関西を中心に社寺建築の世界に携わり、2012年から拠点を恵庭市に移し、社寺建築の伝統的な技術と知識、デザインを軸に大工、建築家、デザイナーという立場を行き来しながら幅広く活動している。

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