北星余市を紹介、生き方を考えるウェブマガジン
2019年2月発行
星しんぶん
hoshiii
春になると、おおはくちょうは生まれ故郷の北国へ旅立っていきます。後ろ髪引かれるような思いを残したまま旅立つことだってあります。それでも旅立たなければならない。そういうタイミング ってあるんです。旅立つ日が迫って来る、それに合わせて、心も身体も準備を進める。どんな準備をするのかは人によって違うでしょう。ともかく「旅立つ」ってことに向けて全力を尽くすって方法もありますし、辿り着く北国までの安全やルートを調べて、到着先での生活のための備えまでしないと安心できないって人もいます。まあ、人生でそのような機会は数回やってきます。繰り返すうちにだんだん慣れて要領がよくなっていくので心配することはありません。むしろ、大切なことは「旅立ち」とセットになってついてくる「別れ」とどう向き合うかです。会う機会があるだろうと、「じゃあまたね〜」なんて言いながら、会えなくなってしま った友人が増えてきました。再会できたら奇跡。そのつもりで、そのときに伝えられる精一杯の別れを告げましょう。
『おおはくちょうのそら』
手島圭三郎・作・絵/絵本塾出版
¥1,836
「こんな風になりたいな」という憧れや願いはありますか? 僕あまりそういう思いを持っていなかったんです。でも、できるだけ早いうちに見つけておくといいですよ。その方が、そうなれる可能性が高くなりますから。今は、憧れから遠いところにいるかもしれません。そういうこともあります。ただね、静かに願い続けてるだけでも、何もしていないのとは全然違います。急にチャンスがやってくるかもしれないでしょ。そのときに、心構えができていないと、一番欲しいものを取り逃がしてしまいますから。
『雨ニモマケズ Rain Won't』
宮沢賢治・文/アーサー・ビナード・英訳/山村浩二・絵/今人舎
¥1,620
この本に書かれている文字はひらがなだけ。でも、読み始めるとどんどんと頭の中にイメージが広がってくるから、詩の世界は不思議。なんだかよくわからないけど、モヤモヤする気持ち。そんなモヤモヤに言葉をつけてあげよう。すると、自分の気持ちや状態がわかってきます。僕たちは、言葉にしないと考えたり気がついたりできないんだ。3月に感じる気持ちってさ、「寂しさ」「不安」「焦り」「緊張」とかかな? 言葉にするとその気持ちと向き合えます。そして、乗り越えられますよ。
『みみをすます』
谷川俊太郎・著/福音館書店
¥1,728
僕たちって、頑張ってるつもりじゃなくても、案外頑張っちゃってる気がします。頑張ってない人なんていないんじゃないかと思うくらいです。怠け続けるってことも、結構しんどいことですし、目の前の問題から逃げ続けるという人生も相当しんどいことです。何かしら頑張らないと生きることはできないようになっているみたい。
山岳救助ボランティアの島崎三歩。山をこよなく愛する山男です。ほぼ山に住んでる感じの格好いい男です。映画にもなりました。彼の遭難者へかける「よくがんばった」という労いの言葉。「頑張る」というとどこか力の入った感じがするんですが、彼に言われると「そうか、僕って頑張ってたんだ」と、どこか救われるような印象を受けるから不思議。
三歩は、山を登るなかで大切な仲間たちと悲しい「別れ」を経験してきました。どうやら、そういう別れの経験が、彼をより強く、そしてしなやかに生きることを教えてくれたようです。別れは人生にとって、かけがえのないもののようですよ。
『岳』
石塚真一/小学館
¥566