「本の紹介」星しんぶん 第4号
[2019年8月発行]

2019.08.01 コラム

2019年8月発行

星しんぶん

hoshiii


ミチルとカケル

月は2つの変化を繰り返しています。その2つとは、「満ちる」と「欠ける」。昨日と今日では月の見え方が違う。月が昨日より大きくなっていれば「満ちる」途中だし、小さくなっていれば「欠ける」途中です。僕たちは月を数えます。8月は、満月が8回やってきたってこと。ちなみに、8月15日は満月です。月はいつも形を変えながら満ち欠けを繰り返してる。大きく見えたり細く見えたり、そして、新月には見えなくなってしまう。だけど、月そのものが形を変えたり、消えてしまったりしているんじゃないんだ。月は、いつも同じ丸い球。僕たちには形が変わって見えていても、月はいつも丸い。ただ、光が月のどこに当たっているのかによって、見え方が違うだけなんだ。僕はいつも、いつまでたっても僕なんだけど、どこに光を当てるかで見え方が違う。月みたいにね。さて、君はどこに光を当てて自分を眺めていますか? 僕たちは、満ち欠けを繰り返しながら歳を重ねていくんだぜ。

『月の満ちかけ絵本』

大枝史郎・文/佐藤みき・絵あすなろ書房
¥1,296

Amazon


ポケットに詩を

たった、ひゃくっぽっちの文字の塊が人生を変えてしまうことってあるんです。僕は詩集をポケットに入れて持ち歩いてる時期がありました。なんか今思うとちょっと恥ずかしいけど、そのときの僕には詩が必要だった。詩集は何度読んでもいつも新鮮に響く詩が数編あるから飽きません。いま、この詩集を読んで心に止まったのは、「一生おなじ歌を 歌い続けるのは」という詩です。あと、もうひとつあるんだけど、それはなんとなく、恥ずかしいから秘密にします。

『いそがなくてもいいんだよ』

岸田衿子/童話屋
¥1,350

Amazon


ズーム・アウト&イン

この絵本は、鶏の鶏冠から始まって、終わりには宇宙にあるポツンとした地球の点までズームアウトしていく様子が描かれています。だんだん視野が広がっていく面白さと、視点の深さが面白い一冊です。視点を広く持つことって大事なことだけど、そればかりではなくて、その先に広がっている奥行き/深さを知ると、今まで見てたものが全然違うものに見えてきたりします。見つめ続けるって面白いかも。その原動力は、好奇心と想像力です。

『ZOOM ズーム』

イシュトバン・バンニャイ/復刊ドットコム
¥1,944

Amazon


変わらないことは難しい

ふと、これは「おかしいな」 って思ったことがあった。でも、世間一般的には「おかしくない」らしい。そのうち、僕はそのことを「おかしくない」って思うようにしてしま った。でもやっぱりたまに「おかしいな」って思うんだ。この本は、政治的に茶色が強要されていく世界の物語。世界は変わらずに多彩なんだけどね。最初は茶色が推奨されて、そのうち茶色以外が禁止されて、さらには茶色じゃなきゃ罰せられるようになっていく。みんながおかしいなって思っていても、気がついたときには茶色を強制されてもう身動きが取れない状態に陥ってしまうんだ。怖いけど、集団でいるとそういうことが起こりやすい。学校とかもそう。みんな不自由なのに、みんなのためにとかさ。「おかしい」 って思ったら、そういう自分の内側にある言葉や感覚を変わらずに持ち続ける。できれば言葉にし続けること。変わ ってしまうことよりも、変わらずにいることのほうが難しいのかもしれない。

『茶色の朝』

フランク パヴロフ・物語/ヴィンセント ギャロ・絵/
藤本一勇・訳 大月書店
¥1,080

Amazon

PAGE TOP