北星余市を紹介、生き方を考えるウェブマガジン
2020年3月発行
星しんぶん
hoshiii
こどもの頃のお気に入りのシャツ。いまの君はもう着ることができません。あのときより何倍も身体が大きくなったからね。数も数えられないし、文字も読めなかった君。いまはもうスラスラ読めるし、計算もできる。よく泣いていた君。自分の気持ちが言葉にできずに泣くことしかできませんでした。でも、いまは自分の気持ちを表現できるようになりました。知らないこともたくさんあったけど、いまはたくさんのことを知っています。このように大きくなって、できるようになったことがたくさんあります。だって、初めはなんにもできなかったのですからね。
高校生にもなると、身体はもうそんなに大きくならないかもしれない。でもさ、もっともっと君は大きくなるよ。 20代、30代、40代、その先もずっとね。君は大きくなったら何になりますか? どんな大人になろうとしていますか? そのためには、どんなことができるようになるといいのでしょうね。
ふとしたきっかけで、自分がとてもちっぽけで頼りなく感じる時があります。昨日までは、これっぽっちもそんなことは感じていなか ったのにね。それはつまり、昨日よりも自分の視界が少し広くなったってこと。自分がちっぽけになったんじゃない。君の世界が広がったのさ。だから、臆病になったりうつむいたりすることはない。胸をはって、あたりをよく見るんだ。そうやって広い世界に出ていけば、自分の大きさのことなんて忘れてしまうものさ。
のえんどうには、100にんのこどもがいました。こどもたちは、さやの中で旅立つ準備をしながら、その時を待ち構えています。やがて、旅の支度が整いました。こどもたちは一斉に空へ飛び立っていきます。自分が根を張る場所を探しにね。そして、こどもたちは芽を出し、のえんどうになっていくのです。こどもたちが大きくなるために、旅立ちの準備を整える大人がいる。そして、その大人にとって君たちはいつまでも愛おしいこどものままなのです。
この本、どこかで見つけたら手にとって眺めてみてください。絶版らしいんだけど、もしかしたらどこかで出会うことがあるかもしれない。「あ、これはあの時の!」と宝物を見つけたみたいに手を伸ばしてほしい。この本の正体は、2007年に開催された「アマゾンの侍たちー人間・自然・芸術ー」という展覧会のカタログで、アマゾンに住むインディアンたちの写真と岡本太郎の言葉が収められています。生きることをまっすぐに励ましてくれます。君たちは大人になるために勉強やバイトをしているわけじゃないでしょ? おそらく、この世界でハッピーに生き抜いていくために学びや労働をしているはず。ご存知の通り、大人にもいろんな種類の大人がいます。漠然と大人になるのではなく、どんな大人になりどんな生き方をしたいのか? そのためには何をしなくてはならないのか? そんなことを考える必要がある。「え、そんなこと考えてなかった!」っていうそこの君。どうぞご安心を。大人になってしま った僕でも今だにそのことを考えて続けているのです。