北星余市を紹介、生き方を考えるウェブマガジン
無類のサウナ好き
若林勇太
YUTA WAKABAYASHI
10代の頃、とにかく早く大人になりたかった。なぜなら家の門限が厳しいことが嫌で、大人になって時間を気にせず遊びたかったから。今ではもちろん、自分の好きな時間に出かけることができるし、欲しい漫画があれば全巻を大人買いすることもできる。選挙権を得てからは、毎回自分なりに候補者の政策を吟味した上で投票に行っているし、運転免許を取得してからしばらくの間は失敗続きだった駐車も、今では難なくできるようになった。
さまざまな大人への通過儀礼を経験してきた今、果たして大人の仲間入りをできているのか? という問いに対して、なぜだか堂々とイエスを言い切れない。「年齢は大人になったけれど、中身は大人になれたのかなあ」という、大人になり切れていない感がつきまとう。大人になるって、どういうことだろう。簡単なようで、難しい問いである。
書店や図書館に行くと、そうした私の大人になり切れていない感がさらに揺さぶられる本を目にすることがある。「〇〇する力」「△△の技術」など、刺激的なタイトルの本たちだ。大体が、著者の顔写真が表紙になって「この本に大人としての成功のヒントがきっとあるに違いない」と思わせる雰囲気を醸し出している。そうした本を目にするたびに、「自分はこのままの大人でよいのだろうか?」と問われているようで、居心地の悪さを感じることもある。
どうやら僕は、大人となったこの先も、今よりも立派な大人に成長し続けるために、知識や教養を磨いていかなければいけないし、時には未知の世界へ飛び込むことが求められる社会を生きているのだと思う。もしかしたら大人というのは、いつの日かパッと線引きをしてなれるものではなく、絶えず目指し続けるものなのだろうか。
「大人になったと言い切れる日なんて来ない」と割り切り、大人になることと向き合い続けていく覚悟を決めることが、30代を迎えた今、求められているのかもしれない。
文・写真:若林勇太
若林勇太 | YUTA WAKABAYASHI
札幌の児童厚生施設にて勤務。大学在学中から、こども・若者が社会の一員としての学びや気づきを育んでいくための実践を模索している。サウナ・スパ健康アドバイザーという資格を取得するほど無類のサウナ好き。おすすめのサウナは札幌にあるニコーリフレ。