北星余市を紹介、生き方を考えるウェブマガジン
NPO法人教育サポートセンター NIRE代表
中塚史行
FUMIYUKI NAKATSUKA
東京の品川で「子ども若者応援フリースペース」を運営しています。ここは、学校や仕事から離れている子どもたちや若者たちが集まり、それぞれが自由に「いる」ことを楽しむ居場所です。そんなフリースペースの「放課後」は夜7時から。スタッフが活動の終わりを告げ、子どもや若者たちはゲームやYouTubeを止め、荷物をまとめはじめると、不思議な時間が始まります。掃除機をかけるスタッフにまとわりつく子、キッチンで洗い物をするスタッフの横で「人間関係って難しいですよね」と深刻な相談を始める子、まったく帰る気配を見せず二次会さながらにおしゃべりするグループや、玄関に立ったまま誰かと帰るタイミングを待つ子などなど。「放課後」というテーマを聞いたとき、子どもや若者たちがウダウダ・ウロウロしているこの自由な、無駄ともいえる時間のことを思い浮かべました。自由な居場所の一日の終わりにも、子どもたちや若者たちがさらに自由を求めて枠外に余白を見つける「放課後」があります。緊張から解放され、心と身体をリラックスさせ、ストレッチしながら次の場に移るまでの間(あわい)である「放課後」には、大切な役割があるかもしれません。
オンライン授業、オンライン会議、オンライン飲み会、オンラインセミナーなどが増えましたが、いつも終わった後にある種の寂しさを感じていました。それは、散会となった後の立ち話や、家路までの孤独を味わう余白がなくなったからかもしれません。心の準備もないまま、いきなり日常に引き戻されることへの違和感に慣れない日々が続いています。コロナ禍の社会は、不要不急の名のもとに、たくさんの余白を奪いました。余白のない社会は窮屈だし、余白を許さない雰囲気は息苦しい。「早く帰って〜」と、子どもたちをフリースペースから追い出すことをやめて、ゆっくりと放課後タイムも見守れる、そんなおおらかな居場所をこれからもつくりたいです。
文・写真:中塚史行
中塚史行 | Fumiyuki Nakatsuka
1972年東京・品川生まれ。NPO法人教育サポートセンターNIRE代表。子どもや若者と関わる仕事を続けています。「子ども若者応援フリースペース」は、「安心できる・自信がつく・仲間がいる」をコンセプトに2016年にスタートした事業です。