北星余市を紹介、生き方を考えるウェブマガジン
NPO法人関西こども文化協会所属
荒瀬祥文
MASAFUMI ARASE
ひょんなことがきっかけで北星学園余市高等学校の方に依頼され、文章を書くことになった。ふだんは報告書と大学の課題くらいでしか書かないのだが、やってみようと思い立ったことと、頼まれたことはなんでも挑戦してみようという精神で日々過ごしているため、今ここに文章を書いている。
少し僕の歴史を語ると、現在は、大阪にある「関西こども文化協会」という子どもの権利条約の具現化を目指しているNPO法人で、子どもたちに関わる事業に携わっているが、その前は、中学1年生の途中から30歳近くまで引きこもっており、社会のレールに乗らず、ちょっと不思議な生き方をしていた。
「お弁当」というテーマで一番初めに思い浮かんだのは、まだ中学校に通っていた時、昼食のお弁当を憂うつな気持ちで食べていた光景を思い出した。しかし最近、ある人にお弁当箱をプレゼントしてもらった。みずから進んで作る弁当の味はおいしくはないが、ワクワクした気持ちで取り組み、日常の中に彩りを与えている。これまた、たまたまとてもお世話になっている職場の方、お二人から手作り弁当を頂く機会があった。年齢も今まで経てきた経験も違うが、今は同じ場所で同じ方向を向いて仕事をしている。
そのうちのお一人は、自分が社会に出ようとした時に1日仕事体験をする機会があり、そこで初めて出会い、帰り際に笑顔で僕を見送ってくれた人だ。何気ない笑顔だったのだろうが、その笑顔が自分は社会の中でもやっていけるかもと思わせてくれ、今もとてもお世話になっている。もう一人の方は、出会いは最近だが、特別視することなく見てくれ、とても尊敬できる人だ。そしてお弁当箱をプレゼントしてくれた人は、一緒にいるとずっと笑顔でいられるような人だ。
自宅のドアの外へ出たことで、多くの人と出会い、世界も広がり、しんどくつらいこともあったが、笑顔の数もたくさん増えた。高等学校卒業程度認定試験を受け、通信制の大学にも通うようになり、世界がさらに広がった。自由な時間は減ったが心はより自由になった。甘く、苦く、時にはしょっぱい味のする具だくさんのお弁当のような人生を歩んでいけたらなと思う。
文・写真:荒瀬祥文
荒瀬祥文 | Masafumi Arase
1985年12月12日生まれ。「NPO法人関西こども文化協会」に所属し、こどもの居場所づくり「ティーンズスペース」、こども食堂「ごはんの会」、放課後児童クラブ研修を担当している。中学生から30歳近くまで引きこもり、その後社会参加をし現在に至る。