北星余市を紹介、生き方を考えるウェブマガジン
3Bird coffee / design代表
藤井一歩
KAZUHO FUJII
僕は余市町で「3Bird」という屋号でふたつの活動をしています。主な活動は「3Bird」という店舗でのカフェ業です。人気商品は自家焙煎のコーヒーと店内で作った食パン、それを使用したサンドイッチです。夫婦で経営していて、妻がコーヒーと焼き菓子などの部門、僕は食パン、サンドイッチ、ドーナッツやカレーパン(冬季間)などの食事部門を担当しています。また「3Bird design」としてグラフィックデザイン業も営んでいます。
「料理」と「デザイン」という、好きなことを仕事としていられることに幸せを感じているのですが、ここに至るまでは失敗も含め、いろいろなことがありました。それらを振り返って思うのは「人生の経験に無駄はないなぁ」ということです。
例えば「料理」。バンド活動をしながらフリーターだった20代前半、ワーキングホリデービザでカナダに行き、働いた鮨屋さんで「まかない」という名の食事がうれしくて、すてきな職業だ!と思い、帰国後選んだ職業は迷いなく飲食店でした。そして独立し、スープカレーとピザとビールを出すカフェバーを経営していましたが、こどもが生まれ生活スタイルを変えるため閉店、その後就職し、本格ピザの店の立ち上げを任されました。そこでは、半年以上ピザの開発に専念させてもらいました。その経験が生きて、今ここでみんなにおいしいと言ってもらえる食パンを生み出すことができたと思っています。自分のお店を閉める時は悲しかったけれど、辞めたことでピザの開発に携わりその時に培った技術が、今につながっていると思うのです。
また、一番人気の厚焼き卵のサンドイッチも、先述のピザ店を退職したあと、田舎で子育てがしたくて黒松内町に移住しスープカレー屋を始めたのですが、全然お客さんが来なくて苦肉の策で移動販売の弁当屋を始めました。その弁当に毎日入っていたのが厚焼き卵です。多い時は毎日100個くらいの卵で卵焼きを作っていました。その経験ですっかり卵焼きが得意になりました。ほかにも、弁当屋は超朝早起きなのですが、そのライフスタイルが自分たちには心地よく、ここ余市に来た時もやるなら朝早いお店だねと話し、「3Bird」は朝7時オープンにしました。やっぱりここでも何かしらつながっているのです。
誰にも訪れる人生の転機、その時はこの先どうなるんだろうと不安に思うのですが、振り返るといつもすべてが今の幸せにつながっています。だからこれからも安心して好きなことをして生きていきたいと思います。デザインや、余市生活など、僕の中での「人生の経験に無駄はないなぁ」ストーリーは尽きません。きっとこれからも人生の最後まで、それは続いていくんだろうと思います。
文・写真:藤井一歩
藤井一歩 | Kazuho Fujii
3Bird coffee / design代表。音楽大好き料理人。「Song of the 3Bird」名義でDJみたいなこともしている。最近ベースを手に入れグルーヴィーなベースラインの練習をしている。また、デザイン勉強のためデッサン教室に通って楽しんでいる。