挑戦

2023.07.18 コラム

NPO法人さいたまユースサポートネット代表

青砥恭

YASUSHI AOTO

私たちは、震災直後の2011年夏、貧困などの家庭の事情や不登校、高校中退、ひきこもり、障がいなどを背景に、孤立して生きる子どもや若者を支えることをミッションに、NPOさいたまユースを設立しました。当初、さいたま市内の公共施設で「たまり場」と名付け、交流と学び直しを目的にした居場所作りを始めました。最初に出会ったのは、「勉強を本当にただで教えてくれますか?」と公立の通信制高校でチラシをまいている私に話しかけてきた10代後半からホームレスとして暮らした若者。父親の自死後、母親から虐待を受け、児童養護施設で暮らした女性でした。そんな若者たちが、毎週土曜日の午後、30人~50人ほど集まってきました。私は高校と大学で教師をしましたが、それだけだったら、このような若者たちと出会うことはなかったと思います。日本社会の課題は、貧困や格差の中で生きる人々を見ようとしないことにあります。

それから、さいたま市を拠点に、孤立する若者たちの居場所から学び直し、さらに出口作り(就労支援)を。今は、地域を主体にする活動、コモンズ形成をめざしています。具体的には、孤立した子どもや若者を地域住民が見つけ、仲間として支え合う地域社会の仕組み(ソーシャル・キャピタル)を積み重ねようという取り組みです。さいたまユースの本部のある「堀崎サイト」で、広いアリーナやスタジオなどの施設を利用し、「マルシェ」「たまり場」を開催し、地域の自治会や社会福祉協議会、民生・児童委員協議会、地元企業、他のNPOなど民間団体、さらに複数の大学の研究者と「堀崎プロジェクト運営協議会」を開催しています。

将来の地域コミュニティの在り方を考える活動です。堀崎サイトに併設しているコモンズ・カフェでは、地域の高齢者団体のイベントやコンサート。アリーナやスタジオはキッズダンスやヨガなどの会場として利用され、子どもから高齢者まで、多くの地域住民の方々の交流の場となっています。

文・写真:青砥恭

 

プロフィール

青砥恭 | Yasushi Aoto

2011年、特定非営利活動法人さいたまユースサポートネットを設立。さいたま市内で、居場所のない若者のコミュニティづくりを応援している。2016年から全国の学習支援の団体の連合体、「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」の代表理事を務めている。

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